(メモ)確定診断とかゴールド・スタンダードとか
- 【注意】筆者は医療関係者ではありません。個人的なメモであり、内容が正しいかどうかについてはまったく保証しません。
経緯
北里大学の坂部氏による発言の解釈をめぐるところから議論がスタートします。(実際のツイートについては、この辺りからたどっていただけると。ただ、枝分かれしているのでたどるのが大変かもしれません。https://twitter.com/flurry/status/361317630688243712 )【クリーンルームでの確定診断】
「(クリーンルーム内での二重盲検に基づく負荷試験による)検査が最も確定的で客観性のある検査だと考えています」
(http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2002dir/n2510dir/n2510_03.htm)
- (この発言についての私の主張)
- 「確定診断」(下の用例1)とあるので、「疾患である」ことを示す検査であっても、「疾患ではない」ことを示す検査ではないのではないか。
- つまり「検査が陽性→疾患である」は言えても「検査が陰性→疾患ではない」は言えないのではないか。
- (NATROMさんの主張)
- 『負荷試験を「最終的な確定診断」だとみなす以上、『「検査が陰性→疾患ではない」は言えない』ということにはなりません』( https://twitter.com/NATROM/status/361325603242258432 )
この議論から派生して、以下の論文概要をどう解釈するかが現在の焦点となっています。
診断のゴールド・スタンダードは負荷試験であるが,これも自覚症状の変化を判定の目安として使わざるを得ない.そういう制約はあるが,我々の施設ではこれまで化学物質負荷試験を,確定診断の目的で施行してきた.
(http://jja.jsaweb.jp/2009/058020112j.html)
坂部氏の文章の解釈を問題としたときと同様に、
- (私)「確定診断とあるので、『検査が陰性→疾患ではない』は言えない」
- (NATROMさん)「ゴールドスタンダードと書かれているので『検査が陰性→疾患ではない』となる」
となります。
「確定診断」について
- 用例1(私の現時点での理解)
- 「○○という病気である」と診断すること。「○○という病気ではない」という診断(除外診断)とは別。検査の場合は「検査が陽性 → ○○という病気である」ということになる。
- たとえば、この辺りとか→ http://www.monolis.com/magazine/04_1005/monolis.html
- 検査が陰性だった場合に何も言えないということは意味していません。何かしらの蓋然性に基づく情報なりが得られるのではないでしょうか。
- 「○○という病気である」と診断すること。「○○という病気ではない」という診断(除外診断)とは別。検査の場合は「検査が陽性 → ○○という病気である」ということになる。
- 用例2(?)
- よく知らないのですが、「確定診断」の一語で除外診断も同時に意味するという用法もあったりするんでしょうか?
「ゴールドスタンダード」について
この用語の意味がわからなかったので簡単に調べてみました(本当はNATROMさんにどこか出典を示してもらうのがいいと思うのですが)以下は現段階での私の理解です。- 用例1(「標準的な手法」)
- 先日「ステッドマン医学大辞典」を立ち読みしたところ、「信頼度が十分に高く、医師間で標準とみなされた手法を指す俗語」みたいなことが書いてあった気がします。うろ覚えですが。まあ、これは英語の意味から類推しやすい気がします。
- (追記)コメント欄で教えていただきました。本質的ではないと思いますが、かなり違いますね……
- 先日「ステッドマン医学大辞典」を立ち読みしたところ、「信頼度が十分に高く、医師間で標準とみなされた手法を指す俗語」みたいなことが書いてあった気がします。うろ覚えですが。まあ、これは英語の意味から類推しやすい気がします。
- 用例2(「参照基準」)
定義上、ある診断方法をゴールドスタンダードと定めると、その診断法は感度100%特異度100%の検査だということになります。「その診断方法を基準にしましょう」という意味。
(http://twitter.com/NATROM/status/362502353808658434)
-
- EBMとか臨床疫学とか臨床研究デザインの分野とかだと、ゴールドスタンダードという用語は、用例1に加えてさらに「基準となる検査方法」という特別な意味を持つようです。何を測るための基準=モノサシかというと、「他の」検査方法の信頼性になります。
- たとえば、悪性腫瘍の診断に際して、組織の病理検査(一般的に「決め手」とされるが、患者への負担が大きいし、そもそも実際に手術しないとならなかったり)をゴールドスタンダード=基準にして、何らかの血液検査(患者への負担が小さい)による診断について評価するといった場合ですね。
- ある検査手法の正しさを評価する際には、「診断:陽性/陰性、病気:あり/なし」( http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20130314 )の2×2の表を用います。ここで「でも、そもそも病気のあり/なしって、どうやって見分けるの?」という疑問が湧いてきますが、「病気である=ゴールドスタンダードで陽性」「病気でない=ゴールドスタンダードで陰性」と、とりあえず『定義』することで、その検査手法について(ゴールドスタンダードと比較した)正しさを評価することが出来るようになるわけですね。
- (ここの書きかためんどい……)
で、「負荷試験がゴールドスタンダードである」と書いてある→「検査で陰性→疾患ではない」は言える?
で、くだんの論文概要( http://jja.jsaweb.jp/2009/058020112j.html )に話題を戻します。現段階での私の意見はこんな感じでしょうか。- (以前からの主張)「確定診断」とあるので、「検査が陰性→疾患ではない」は言えないのでは。
- 彼らが実施してきた負荷試験は標準化されているようには見えないし(「プロトコルの標準化が行われるべきである」みたいに結論に書いてあるので、世の中一般にもまだ存在してないように見える)ここでの「ゴールドスタンダード」を(用例2)のような狭い意味で解釈するのは難しいのではないか。
- (もし、仮に)「該当部分は『何らかの適切にデザインされた負荷試験はゴールドスタンダード(用例2)たりうる』 という信念について述べているにすぎない」と解釈してみたとしても……
- いやそれ、何を意味するの……っていう。めんどいので後まわし。