「新世界秩序」の新しいヴィジョンは、このように最近のアメリカ政治における実際的な枠組みとなっている――9月11日以後、基本的にアメリカは世界の他の部分を、信頼できるパートナーとしては不適切とみなしたのだ。アメリカの究極的な目標は、もはや、普遍的なリベラル民主主義を拡大していくフクヤマユートピアではなく、合衆国を「アメリカ要塞」へと――つまり、他の世界から分離された孤独な超大国であり、新しい軍事力を用いて、自国にとって不可欠な経済利益を保護して、自らの安全を確保するような存在へと変化させることになったのだ。
 この新しい軍事力は、地球上のどこにでも迅速に配備させる戦力だけでなく、ペンタゴンが軌道上から地表面をコントロールすることのできる宇宙兵器の開発をも含んでいる。
 この戦略は、アメリカ合衆国とヨーロッパとの間の最近の不一致に、新しい光を投げかける。――つまり、ヨーロッパがアメリカ合衆国を「裏切った」ということではないのだ。もはやアメリカ合衆国は、ヨーロッパとの排他的な協力関係に頼る必要はない。要するに、ブッシュのアメリカは新しい全世界的な帝国であるふりをしているが、実際にはそうではないのだ。むしろ、それは冷酷に自らの利益を追求している国民国家のままなのである。
 これはあたかもアメリカ政治が、環境保護主義者にとっての有名なモットーを妙な具合に反転させたもの――「世界的視野で行動して、身の周りのことを考えよう(Act globally, think locally.)」によって導かれているかのようである。