このことは権力者にとってのジレンマである。どうすればカーツ大佐を、彼の病理抜きに得ることが出来るだろうか?どのようにすれば人々を怪物に変えること無しに、必要な汚れ仕事をさせることが出来るだろうか?
 ナチスのSS長官であったハインリッヒ・ヒムラーは、これと同じジレンマに取り組んだ。ヨーロッパのユダヤ人を粛清するという任務に直面したとき、ヒムラーは「誰かが汚れ仕事をやらなければならないのだ。だから、さあそれに取り組もう!」という英雄的な態度――国家のために立派な行いをすることや自己犠牲を行うのは簡単だが、国家のために犯罪を犯すことはそれよりずっと難しいのだ――を採用した。