このことは、ニューオーリンズ――内なる壁が黒人たちをゲットーに押し込めて豊かさから疎外する点で、アメリカ合衆国でもっとも目に付く都市の1つだ――においての、「略奪や強姦を行うと思われる誰か」に関する流言や「噂」へと我々を引き戻す。
 その流言や噂は、我々が夢想する壁の向こう側にいる「誰か」についてのものなのだ。ますます彼らはもう一つの世界――我々の恐怖や不安や秘められた欲望を投影するスクリーンとしての空白のゾーン――に住むようになっている。
 壁の向こう側にいる「略奪や強姦を行っていると想定される誰か」――彼らこそ、ベネットが口を滑らせ、検閲修正された形で彼の残忍な夢を告白しても良いとした対象である*1カトリーナが過ぎ去った直後における偽りの噂や流言は、何よりもアメリカ社会における深刻な階級分断の証人なのだ。

*1:原文は"this is the subject about whom Bennett can afford to make his slips of the tongue and confess in a censored mode his murderous dreams."