Slavoj Zizek ”You May!”(その1)

flurry1800-12-30

('Rule Girls' are heterosexual women who follow precise rules as to how ……)
『ルール・ガールズ』*1とは、どのように自らを誘惑させるかに関して厳密なルール――たとえば、「男性からデートの申し込みがあったときには、それがデート本番の3日以上前に申し込まれたものでなければOKを出さない」とか――に従う、異性愛的傾向の女性である。
 ルール・ガールズが従うルールは、古い時代に男性に積極的に迫られた女性たちの行動を規定していた慣習と一致している。しかしながらルール・ガールズ現象は保守的な価値への回帰を意味するわけではない。なぜなら、いまや女性たちはルールそれ自体を自由に選ぶことができるからだ。ルール・ガールズ現象は今日の『リスク社会』において、日々における慣習が『再帰化』(reflexivisation)していることの良い実例であろう。
 アンソニー・ギデンズウルリッヒ・ベックらによる「リスク社会論」によると、我々はもはや、自然("Nature")や伝統と調和するような人生を送ってはいない。つまり、我々の社会的行動を導いてくれるような、受容されたフィクションに基づく象徴的秩序や慣例(code)――ラカンが『大文字の他者』と呼ぶものだ――が存在していないのだ。
 性的な方向付けから民族集団への帰属に至るまで、すべての我々の欲求は、ますます頻繁に「どれを選択するか」という問題として経験されるようになっている。――どのように子供に食事を与え、教育すればよいのか、どのように性的誘惑を進めればよいのか、どの食物をどのように食べればよいのか、どのようにリラックスして楽しめばよいのか――、かつて自明に見えていたこれらのものは、現在では再帰化によって『植民地化』されてしまっている。それらはもはや自明のものではなく、習い覚えるもの、決断するものとして経験されている。

*1:訳注:「THE RULES 理想の男性と結婚するための35の法則」という本があって、ベストセラーになったのか続編も相当数出版されているそうな。この本に書いてあることを守る女性たちのことを指しているのでしょう。本の目次を見ると「最初にこちらから話しかけてはいけない(踊りに誘うなどもってのほか)」なんて書いてありますね。