Slavoj Zizek ”You May!”(その2)

flurry1800-12-29

(The retreat of the accepted Big Other accounts for the prevalence of code-cracking in popular culture. ……)
 「受容された大文字の他者」の後退は、ポップカルチャーにおける暗号解読(code cracking)の流行を説明してくれる。ニューエイジ的な疑似科学がコンピュータ技術を用いて、聖書やピラミッドの中に隠されていて人類の未来を明かしてくれるであろう難解な暗号を解読しようと試みる*1のはその一例である。
 もう一つの例として、サイバースペース映画における1シーン――キーボードの上に身を屈めたヒーロー(あるいはヒロイン)が時間と競争で死にもの狂いに作業を行うが、彼/彼女のアクセスは『アクセス拒否』('access denied')となってしまう――が挙げられる。最後には彼/彼女はパスワードを解読して、政府の秘密機関が自由と民主主義に対する陰謀に加担しているということを発見するに至る。
 解読されるべき暗号(code)があると信じることは、もちろん「大文字の他者」の存在を信じていることと同じである。上記の全てのケースにおいて、我々の混沌とした社会生活に構造を与えてくれるであろうエージェントが求められているのである。

*1:訳注:たとえば、マイケル・ドロズニン「聖書の暗号」(新潮文庫)とか?