http://www.tatsuru.com/diary/tohoho/th0006.html

で、話は飛ぶけれど、いまの人間関係でいちばん欠けているものは何か、ということがこのあいだ議論になった。「愛」じゃないですか、と学生さんの一人が言った。甘いね。「愛」なんか売るほどあるよ。欠けているのはね、「敬意」なのである。「敬意」というのは、「自分とは別のもの」に対する畏怖と、理解不可能であることへの涼しい諦念と、それにもかかわらずコミュニケーションの回路を維持しておきたいと願う欲望のおりなす、とてもデリケートなこころのあり方である。「敬意」のあるところにしか対話は成り立たない。「愛」というのをしばしばひとは「親しさ」と勘違いする。そして「親しさ」は実にしばしば「敬意の欠如」として表現される。だから「愛」があるのに、「対話」が成り立たないという関係が増殖するのである。おじさんたちがいちばん切実に求めているのは、「愛」ではない。「敬意」である。