ここにおいて我々はこのドラマシリーズの根本的なイデオロギー的虚偽に直面する。自己を道具化する、この徹底して非情な態度にも関わらず、CTUのエージェント――とりわけジャック――は「普通」の人々が通常感じるであろう感情的なジレンマに囚われてしまうような「温かい人間」であり続けるのだ。
 彼らは妻や子どもを愛し、嫉妬に苦しむ。――しかし、たちどころに彼らは、愛する人たちを任務のための犠牲として喜んで捧げるのだ。彼らは精神分析的には「カフェイン抜きのコーヒー」の等価物のようなものである。置かれている状況において必要なあらゆる恐るべき事柄を彼らは行なうが、そのことに対する個人的な代償を支払うことは無いのだ。