2年前、欧州連合EU)の不吉な決定はほとんど注目を集めずに議会を通過した。EUを移民の流入から確実に隔離するために全ヨーロッパ的な国境警備隊を設立するという計画である。これこそがグローバリゼーションの真実――繁栄のヨーロッパを移民の殺到から保護する新しい壁の建設――なのだ。
 古のマルクス主義の「物同士の関係」に対する「ヒューマニスト」的な抵抗を、そして「人間同士の関係」を蘇生させる誘惑にかられるかもしれない*1グローバル資本主義によって開かれた、きわめて自由な循環においては、「物」(商品)が自由に循環する一方で、人々の循環移動はますます制限されるようになっている。それゆえ我々が相手取っているのは「未完のプロジェクトとしてのグローバリゼーション」ではなく「グローバリゼーションの弁証法」である。人々の分離こそが経済のグローバリゼーションにおける現実なのだ。
 先進国におけるこの新しい人種差別主義は、途上国のものより幾分か残忍である。その内なる正当化は、自然主義者のそれ(西側先進国の「自然な」優越)でも、文化主義者のそれ(西側の我々は、自らの文化的アイデンティティを維持することを欲する)でもない。むしろそれは、臆すること無い経済的な自己中心主義――(相対的な)経済的繁栄の範囲に含まれる人々とそれから締め出される人々の間の根本的な分断である。

*1:原文は"One is tempted to resuscitate here the old Marxist "humanist" opposition of "relations between things" and "relations between persons" : "