浅野智彦「自己への物語論的接近――家族療法から社会学へ」勁草書房)を読んだ。面白かったけど色々とツッコミを入れたくなるような、そんな本だった。
 論文スタイルで書かれた本なので冒頭に結論が書いてあるのが明快といえば明快。でも、本文の4ページ目にいきなり、

  1. 自己は、自分自身について物語ることを通して生み出される
  2. 自己物語はいつでも「語り得ないもの」を前提にし、かつそれを隠蔽している

とか書かれてしまうと、思わずのけぞってしまうことですよ。この時点で気分的にお腹一杯になってしまいました。

「自分が自分について語ること。この自己言及は、語る自分と語られる自分との、同一と差異のパラドックスを生み出す」
 浅野氏はこのような前提を置く。そしてこの前提を武器として浅野氏はたとえば、

  • 自己を物語るということは、そのパラドックスを隠蔽しようとすることだ
  • 他者がその物語を受け入れてくれるということが、パラドックスが隠蔽されたということを意味する

といったことについて書いていく。