ジェファーソン高校恋愛構造図と性感染症対策

サイコドクターぶらり旅で知った「ジェファーソン高校恋愛構造図」を見ていて、「ふーん、ループが全然存在しないのね」と思って原文らしきもの(http://researchnews.osu.edu/archive/chains.htm)を読んでみたところ、やっぱりループが存在しないことがテーマになってました。以下、関連する後半部分を勝手に適当に訳してみます。


 ジェファーソン高校の性愛ネットワークに関する驚くべき点は、ループ(cycling)――ネットワーク的に近いところにいる他の人間と関係を持つこと――がほとんど存在しないことだとMoodyは述べる。
 このループの欠如は、思春期の若者たちが持っているルールによって説明できるかもしれない。十代の若者たちは(女性側の観点から説明した場合)「自分の元カレが現在付き合っている女性」の元カレとはデートしようとはしない。そのような関係は"Seconds"(訳注:「代用品」ぐらいの意味?)とみなされるだろうからである。
「もし、貴方と誰かとの関係がダメになってしまった場合、彼ら彼女らとは出来るだけ離れたところで次の関係を得たいと貴方は思うのではないだろうか。元カレ元カノと近い関係にある誰かとデートすることによって元カレ元カノとの結びつきが続くことを、貴方は望まないであろう」とMoodyは述べる。
 このようなルールがもたらす実際的な結果として、中核部分を持たず、その代わりに鎖のような長い構造を持つネットワークが出来上がる。Moody、Bearman、Stovelらによると、このことは十代の若者間におけるSTD(性感染症)の蔓延を防ぐ上で重要な示唆を与えてくれる。
 成人の性愛ネットワークの場合には、性的に活発な人々で構成された中核部分があり、この中核部分が病気の主な蔓延源となる。したがって、この中核部分に対して教育やその他の取組みを集中することが出来る。しかし若者の場合には、「目標とするような中核部分は存在しないため、幅広い層に渡る取組みが必要だ」とMoodyは述べる。「小さなグループだけに取組みを集中するわけにはいかないのだ」
 またこの結果は、どのような人々に対して取組みを行うかは重要でないことも意味する。ジェファーソン高校に見られるような感染ネットワークはとても脆弱であるため、鎖の中の1つのリンクを遮断すればよいのではないだろうか。どのリンクが遮断されても、そのリンクから先のネットワークへの感染は止まるだろう。そして十分な数のリンクが遮断されたならば、性感染症の蔓延はきわめて制限されたものになるだろう。
「ここで示したネットワークにおける学生たちは普通の学生たちだ。彼らは性的には極めて平均的であり、とりたてて性行為に活発というわけではない。それゆえ、彼らのうちの何人かが性感染症への自衛策を取ることを支援するような社会政策は、感染ネットワークにおける多数の鎖を断ち切ることができるだろう」
 社会学ではなく疫学の話になってるのが面白いですにゃあ。少し解説しておくと、エイズやらクラミジアやら、そういう性感染症の感染をどのように防ぐかというのがテーマなわけです。んで研究結果によると、大人の場合だと性愛ネットワークには中核となる「ヤリまくり」の人たちが居るから、その人たちに的を絞って生活指導をしていけば良いわけ。
(その「ヤリまくり」のひとたちをどのように特定するんだよ!という疑問は当然出てくるわけですが。個人的な推測ですが、この「大人の場合」というのは具体的にはスラムなどの貧困層で、福祉関連のケースワーカーが日常的に出入りするような場所を念頭に置かれているように感じます)
「十代での性感染症蔓延!!」(←日本でも話題になってますねえ)の場合だと、そういう特定の「犯人探し」をするよりも、性感染症に関する啓蒙活動を全体的に広く薄く行うことによって、個々の若者に性感染症に対する自衛策をとってもらうことを期待したほうが結果的には効果的じゃないか? ということではないかと。