ユナイテッド93とかいう映画のはなし。

http://d.hatena.ne.jp/kebabtaro/20060822/p1
あと気になった点をもうひとつ。物語の内容面においては安易に政治的な理念を口にすることなく、(良い意味で)俯瞰的な視点を徹頭徹尾欠いたままに映画は終わるのだけど、もっぱら評判となっているこの映画の迫真性は何によるものなのかを考えるとき、その内容面ではなく語りの形式に着目すると、むしろドキュメンタリーとは真逆の方法によって構成された映画であることには留意しておいた方がいい。現在進行形の時間の中で、複数の場所において、複数の事態が交わらないまま同時進行している。しかしまた、レーダーの画面や電話というメディアによって、複数のエージェントは同じ平面を共有してもいる。こうしたエージェント単位で交互に切り替わるシークエンスによって処理された物語の時間と空間は、経過した時間を示す数字やマルチ分割された画面こそ使われていないものの、あるテレビドラマのそれを想起しはしないだろうか。「事件はリアルタイムで起こっている」。僕がこの映画に欺瞞というか扇情的な何かを感じたのは、この手法にあったのかもしれない。まあそんなもんだろと言えばそれまでなんだけど。