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適当訳『台湾にとっての恐怖の年: 2006年』
- (2020年1月)はてなグループの終了にともない、記事をこちらに移動しました。
【概要】
- 2004年のアジア・タイムズ・オンラインの記事をテキトーに訳してみたよ。
【背景】
- 本文を早く読みたいひとは、さっさと下の段落に行くといいよ。
- 軍事系ブロガーとして一部で有名であるらしい(熱狂的な信者もいるんですって)
obiektJSFさんというかたが以下の主張をゆってました。 - それはそうと、「『中国が特殊部隊を用いて台湾に侵攻する』という状況設定について記した『ソース』」として
obiektJSFさんが出してきた(http://obiekt.seesaa.net/article/137420432.html)英語の記事をパラパラと読んでみたら、これが色々な意味で激しく面白い。 - あ、訳しているひとは軍事とかあんまり詳しくないです。英語も。
- 不適当な箇所がありましたら遠慮なくご指摘ください。
- ではどうぞ。
【記事の筆者について】
- 記事の筆者であるウェンデル・ミニックは週刊ジェーン・ディフェンス(the Jane's Defence Weekly)の台湾特派員だよ。
- 『スパイと工作員:諜報・秘密活動に従事する人々の国際的百科事典』(マクファーランド社 1992年)って本も書いてるよ。
【本文】
- この記事は2004年の台北からお届けするよ。
- 本題。もし中国が台湾を侵略するとしたら、ノルマンディー上陸作戦みたいな大規模な揚陸侵攻作戦は行わないんじゃないかな。
- 中国が「断頭戦略」を使ってくる可能性のほうが高いよ。
- 断頭戦略は相手の指揮系統をショートさせ、国の中枢神経的な部分を破壊することで、相手を完膚なきまでに身動きがとれない状態にしてしまうんだ。
- 古い格言にも「頭を殺せば体も死ぬ」ってあるよね。
- 単に中国は権力の中枢、つまり首都や指導者たちを押さえるだけでいいんだ。
- 断頭戦略は相手の指揮系統をショートさせ、国の中枢神経的な部分を破壊することで、相手を完膚なきまでに身動きがとれない状態にしてしまうんだ。
- もし中国が台湾と再統一するために武力を用いることにした場合、その機会は2006年に訪れると言われてるよ。
- なので、2006年の戌年は明らかに恐怖の年になるよ。
- アメリカ国防総省は現在、中国の台湾に対する軍事的脅威を再検討中だよ。
- この再検討によって、台湾を防衛する上での考え方が劇的に変わったよ。
- 伝統的に、台湾はつねにノルマンディー上陸作戦みたいな揚陸作戦を恐れていて、それに対する防衛戦略を考えてたんだ。
- 進行中であると思われる断頭戦略の可能性を考慮に入れて、台湾をたった7日間で失う可能性について、いまやアメリカ国防総省は考え始めてるよ。
- 以前は考えられなかったことだよ。
【台湾侵攻シナリオ】
- 中国が最小の労力と損害で台湾を占領しようと思った場合、「特殊部隊や緊急展開用の部隊と、空軍やミサイル攻撃の組み合わせ」が一番ありそうだよ。
- 中国の第15空降軍(空挺第43、44、45師団)が直接、台北に降下作戦を行うのが侵攻の第一段階になるよ。
- 各師団は11,000の歩兵と軽戦車と自走砲を持ってるよ。
- 台北以外にも、台湾の第6軍団に所属する4個師団を戦術的に拘束するために、林口(Linkou)、桃園(Taoyuan)、宜蘭(Yilan*6)に降りるんじゃないかな。
- いくつかの分析資料によると、中国は1988年のチベットでは、1個師団の空挺を48時間で完了させたらしいよ。
- 今ではその2倍くらい、22,000人くらいは2日で降ろせると思うね。
- 台湾の陸軍第6軍団には7個歩兵旅団が属してるよ。
- 第152/153ドラゴン旅団と、第176/178タイガー旅団は精鋭だと言われてるね。
- 第269機械化旅団、第351機械化歩兵旅団、第542装甲旅団への直接攻撃も中国軍にとっては必須なんじゃないかな。
- 最初の戦闘のほとんどは、総統府やら国防部やら立法院やらがある台北市の中正区で起こるんじゃないかな。
- 中国軍が地面を踏むと同時に、台湾陸軍の憲兵隊を相手にすることになるよ。
- 憲兵隊は、重要拠点のすべての鍵を持ちすべての扉を守る門番だ。
- 中国軍が攻めてきたら本当の意味でそうなるね。
- 憲兵隊は、重要拠点のすべての鍵を持ちすべての扉を守る門番だ。
- 中国の空挺部隊は、数時間後、ことによると数日後に、台北郊外に駐屯している通常の歩兵部隊を相手にすることになるよ。
- 増援が来るまでは、中国軍を阻止するのは憲兵隊におまかせだ。
- ――ダメかもしれないけど。
- 増援が来るまでは、中国軍を阻止するのは憲兵隊におまかせだ。
【要人暗殺や破壊工作も起こるかも】
- 侵攻の何ヶ月も前に特殊部隊が台湾に侵入していて、侵攻の数時間前に指導者を暗殺したり、レーダーや通信施設を攻撃したりするかも。
- 侵入者は台湾軍や警察のシンパから支援を受けられるかも。
- 軍や警察の少なくとも75%は国民党支持――つまりは中国・台湾の統一を支持している――と考えられているんだ。
- 侵入者の多くはタクシーを使って、気付かれずに街を動き回ることができるんじゃないかな。
- 中国情報部が本土の売春婦を雇って、台湾の指導部に対して色仕掛けを企むこともありそうだね。
- 侵入者は台湾軍や警察のシンパから支援を受けられるかも。
- 空挺部隊が台北国際空港*7を確保した段階で、侵攻の第二段階がはじまるよ。
- 緊急展開用の第14師団が、Il-76やらやらY-8やらアントノフ26やらの輸送機でやってくるよ。
- もちろん1,000機の戦闘機や爆撃機も一緒だよ。
- 輸送機の数が足りない場合は民間機も使うかも。中国は500機のボーイングとエアバスを持ってるし。
- ヘリコプターだって使うね。
- 輸送された部隊は、橋や重要施設を押さえるために首都中に散らばっていくよ。
- おっと、中国軍は台湾の緊急展開部隊に直面するかもしれない。新しく創設された"Aviation and Special Forces Command (ASFC)"っていう部隊があるんだ。
- また、台湾には注目に値するイカした特殊部隊がいくつかあるんだ。
- まあ、彼らが戦闘に間に合うかどうかは別の話だけど。
- 多くのひとは台湾の若者(兵隊も含むよ)のことを「いちご世代」って呼んでるんだ。
- いい生活のおかげで甘やかされて、軟弱になっちゃったってこと。
- 台湾を訪れたアメリカ陸軍の士官は、しばしば、台湾陸軍の新兵訓練キャンプが「ゆとり」すぎるんじゃないの、って不満をこぼすよ。
- 「中国の侵略よりも、自分とこの兵隊の親御さんが怒るのを恐れてるんじゃねえの?」とも言ってるね。
- ある『政治的に正しい』国会議員がアジア・タイムズ・オンライン(この文章が載ってるやつ)に「台湾は軍内での暴力に対処しなければならない」って訴えてきたことがあったよ。
- 記者は彼に指摘したよ。「いやその、軍隊って暴力機構なんですけど」
【台湾軍のアイデンティティ危機】
- 台湾軍はアイデンティティの危機に直面しているよ。
- 台湾は中国の一部だという考えは、未だに台湾軍内で強い共感を得ているんだ。。
- 陸軍の部隊章には、しばしば中国の輪郭が描かれているよ。台湾じゃなくてね。
- 実際、台湾軍の基地を訪問したひとは、基地が台湾にあることに気付かされるようなものを、まったく見つけることができないよ。
- 徴兵された台湾の兵士にとって、中国は軍隊経験の中心に位置するテーマなんだ。
- ほら、海軍の艦艇名ですら中国をテーマにしてるじゃん。
- この侵攻シナリオで台湾海軍ができることはほとんどないよ。
- 石のように海底に沈むこと以外は、だけど。
- そりゃまあ、台湾に飛んでくる飛行機を何機か撃ち落とすことはできると思うけど、圧倒的な数の中国の対艦ミサイルを前に、ほとんどの艦艇はドボン。
- 特にヤバいのがロシア製サンバーン対艦ミサイルだよ。
- 台湾空軍は、中国軍が本土沿岸から発射した短距離弾道ミサイル500基による滑走路のダメージを修復するために忙殺されるよ。
- 中国の第二砲兵部隊(いわゆる戦略ミサイル部隊だね)が、短距離弾道ミサイル東風11号(Dong Feng 11, M-11)と東風15号(DF-15, M-9)による複数方向からの多重飽和攻撃を、空軍基地や港やその他の重要拠点に対して実施するよ。
- 少数のミサイルは台北周辺に配備されてるパトリオット・ミサイル3個ユニットによって迎撃されるかもね。
- 台湾空軍が何機か戦闘機を離陸させたとしても、中国軍は最新鋭のスホーイ30やらその他スホーイ27やらJH-7やらの戦闘機で対応できるよ。
- 基地が破壊される前に滑走路から離陸した台湾空軍の戦闘機は、中国軍と激戦を繰り広げるだろうね。
- でも燃料がなくなっても、着陸する場所はないんだ。
- 多くの戦闘機は単に最後まで戦って、パラシュートで緊急脱出するだろうね。
- 中国軍の100機のH-6轟炸六型(Tu-16バジャー爆撃機のライセンス生産)と約500機のH-5轟炸五型(Il-28ビーグル爆撃機のコピー)が、最初のミサイル攻撃で破壊されなかったエリアへの攻撃を行うよ。
- 中国軍にとってとくに注目すべき場所は、台湾東側にある、山をくりぬいて作られた2つの「秘密」の空軍基地――花蓮のChihhang(漢字が出ねえ)空軍基地、台東の知本航空基地――だよ。
- これらの基地は最初のミサイル攻撃に生き残るため、中国空軍にとって少しばかり余分な手間が必要となるよ。
【中国支持の新政府がすみやかに宣言を実施するよ】
- 台北が占領された時点で、北京によって選ばれた新政府が宣言を行うよ。
- 新政府の宣言が行われると、新しい台湾総統は中国に対するすべての敵対行為を停止すると発表するよ。
- 台湾全土に向けたテレビでのスピーチで、新総統はすべての部隊が休戦するように命令するよ。
- 台湾軍内部で高まっている親中国的な心情からすると、ほとんどの部隊はしぶしぶながら新総統に従うと考えられるよ。
- 新総統はアメリカ政府によって2002年に敷設された新しいホットライン回線を使ってアメリカ国防総省に連絡をとろうとするよ。
- 台湾に味方しようとする、あるいは台湾の新しい賓客である中国に敵対しようとするようなアメリカの軍事行動について警告を発するよ。
- ホットライン回線を使うことで、彼および彼の閣僚が秘匿通信に必要な暗号を知っていること、また、新総統が台湾国防部内のホットラインにアクセスする権限を持っていること――つまりは権力と支配をアピールするよ。
- アメリカ軍は命令があり次第、このシナリオに対応可能だよ。
- 沖縄の嘉手納基地にある第5空軍配下には、F15ストライク・イーグル2個飛行中隊がいるよ。
- 沖縄以外だと、三沢基地には2個飛行中隊のF16ファイティング・ファルコン、韓国の第7空軍には3個飛行中隊のF16、アラスカの第11空軍には3個飛行中隊のF15と1個飛行中隊のF16がいるよ。
【海兵隊を呼びますか?】
- 中国軍はアメリカの航空戦力を恐れるのはもっともだよ。
- アメリカ海兵隊は太平洋に7隻の強襲揚陸艦――さまざまな種類のヘリコプターや戦闘機や海兵隊員を積んだ――を持ってるよ。
- これらは単体で侵攻可能な戦力だと考えてよいよ。
- タラワ、ベロー・ウッド、ペリリュー、エセックス、ボクサー、ボノム・リシャール、イオー・ジマがその7隻だよ。
- これらは単体で侵攻可能な戦力だと考えてよいよ。
- これらの船は基本的に小型の空母だと考えてよいよ。
【アメリカの空母打撃群がグアムへと移動してくるかも】
- また中国軍は、グアム近くのアンダーセン空軍基地へ移動してきたニューカマーを考慮に入れる必要があるよ。
- PACOMは、この移動は北朝鮮情勢への対応だと主張してるけど、他のひとは台湾情勢がこの移動の根っこにあると推測しているよ。
- 軍事バランスのもう一つの要素である日本も、この状況に介入可能だよ。
- アメリカを巻き込んで紛争が拡大した場合、中国がこの地域のアメリカ軍基地に攻撃を行う可能性もあるよ。
- 終端誘導可能な東風21号(DF-21C)准中距離弾道ミサイルを沖縄に発射するのが、その手始めになるんじゃないかな。
- でも、アメリカ軍が台湾海峡を通る中国軍の飛行機や艦船と交戦するまでは、北京はこのオプションを検討しないと思うよ。
- アナリストによると、中国は日本やアラスカ、ハワイにあるアメリカ軍基地に特殊部隊での攻撃を行う可能性すらあるってさ。
- これらのオプションは中国に自軍を強化する余裕を与え、アメリカ軍の介入を妨げるよ。
【どうして台湾を守らなければならないかって?】
- 地図を見れば誰でも理由はわかるよね。
- 台湾の地理的位置は戦略的に非常に価値があるよ。
- それに加えて台湾は、アメリカの情報収集において重要な監視口になってるよ。
- 台湾が中国の軍事力下に置かれることは、日本にとって想像を絶することだよ。
- もちろんこれは、意図的に選択した事実に基づき、推測で味付けしたシナリオにすぎないよ。
- 中国に何が出来るかという想定と、何をするだろうかという想定は別の話だよ。
- ノルマンディー型の侵攻や、もしくは最終戦争のようなミサイル攻撃に言及するけれど、この両者の中間に位置する最速の侵攻計画について真剣に検討しない、メディアの評論家があまりにも多いんだ。
- もちろん中国には「どんな侵攻計画もムダだよ」って警告すべきだけどね。
*1:「もうちょっとマジメな文体で書いてくれたら読む気になるのに。相手に伝えるための戦略が悪いよねー」と思われましたら、おたよりください。検討します。
*2:数はてきとう。普天間基地のCH-53Eが15機ぐらいって聞いたので、機体の稼働率7割で、あと予備機やら何やら考えたらこんなものかなあと
*3:http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20100109/p1
*4:http://d.hatena.ne.jp/finalvent/20100104/1262563983
*5:註:その理由ってどうよ、とか思いました。
*6:註:本文中にはIlianとあったけど、これかなあ
*7:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%B0%E5%8C%97%E6%9D%BE%E5%B1%B1%E7%A9%BA%E6%B8%AF
*8:"It's not the size of the dog in the fight, but the size of the fight in the dog that matters." 犬が自分より非常に大きな相手と戦うときには、肉体的なサイズよりも勇気などの精神的な態度のほうが重要になる、とかそんな感じの意味。