東浩紀さん、疎開先の伊豆からニューヨークタイムズ紙に「日本人は惨禍に勇敢に立ち向かっている。日本人は自らを誇りに思っている」と寄稿

(3/18 翻訳を一部修正いたしました)
東浩紀さんが疎開*1から本日付のニューヨークタイムズ紙に寄稿した文章について、後半部分を訳しました。
http://www.nytimes.com/2011/03/17/opinion/17azuma.html?_r=1&src=tptw

内容自体の酷さもありますが、とりあえず、いま言いたいこととしてはhokusyu82さんの以下のツイートに尽きます。

ぼくは逃げる逃げないは個人の立場と判断ですればいいと思うし「逃げろ」というのも「逃げるな」というのも今の東京ではちょっと変だと思う。でもその、だとしても(だとすれば)そんな文章書くなよと。せめて「日本の政府と人々は…勇敢に立ち向かっている。俺は伊豆に逃げた」って付け足してほしい
http://twitter.com/hokusyu82/status/48345586847580160

英語力がない上に、ほとんど辞書を引かずに訳したので誤訳などあると思います。指摘お願いできればと思います。


From the quakes to the tsunami to...


 地震から、津波、そして原発での事故に至る、すべての出来事の連鎖について、いまや私たちはみな知っている。そして、はっきりした予想や判断については待つ必要があるだろうが、地震から6日目の今日、ただひとつ言えることがある:日本人は自らの国家を、少なくともこの20〜30年よりも肯定的に見始めているのだ。

 第二次世界大戦での敗北以降、日本人は自らの国や政府に誇りを持つことがほとんど出来なかった不幸な人々である。これは、経済バブルが弾け、長きにわたる景気後退が続いたこの20年間にはとくに当てはまっている。首相が何度も交代し、政策が行き詰まり、政治的シニシズムが蔓延した。さらには、1995年の阪神大震災の後の政府の対応が無能であったため、人々からの強い批判が集まった。

 しかし今回、状況は異なっている。もちろん、マスメディアは容赦なく原子力事故および停電について、政府と電力会社を詰問している。その一方で支持の声はとても大きい。枝野幸男官房長官(救援活動に関する報道官だ)はインターネットのヒーローになった。また自衛隊の救援活動も賞賛された。

 私は日本人が「公共」("the public")についてこれほど考え議論するのを目にしたことがない。ほんの最近まで、日本人と日本政府は、優柔不断で利己的で、不満と些細な言い争いで混乱しているかに見えた。しかし今、彼らは以前とは別人であるかのように、一緒になって自らの国を果敢に守ろうとしている。若い世代の表現を借りるならば、日本人は完全に「キャラ」が変わったかに見える。

 奇妙なことに、日本人はいまや日本人であることに誇りを持っている。もちろん、この新しいキャラがどれほど望ましいものであるかは議論の余地がある。ナショナリズムに繋がりかねないからだ。すでにそのような懸念がウェブから立ち上りつつあるのを私は目にしている。にも関わらず、私はこの現象に一筋の希望の光を見いだすのだ。

 地震以前、日本は来るべき衰退について心配する気弱な国家であった。人々は国家に何も期待せず、世代を越えた相互扶助や地域コミュニティの信頼は崩壊しはじめていた。

 しかし、おそらく日本人は、新たな信頼で結ばれた社会を再建していくため、この惨禍の経験を用いることができるはずだ。多くの人々は自らの優柔不断な自己へと立ち戻ろうとするだろうが、こうした自分自身の(有害なシニシズムの中で麻痺していた)公共心と愛国心に溢れた面を見いだすという経験は、消え去るものではない。

 私は海外メディアが、日本人が災害に直面した際の冷静さと倫理的道徳的な(moral)態度について、驚きの声で報じているのを耳にした。しかし、実際にはそれは、日本人自身にとっても驚きだったのだ。「全力で取り組めばできるよ」「国全体がおしまいになるほどの状況じゃない」「「蓋を開けてみればオレたち、国民全体としては捨てたもんじゃないよな」これが、この数日の間、いささかの当惑と共に日本人が感じたものなのだ。

 私たちのこの感情はどこまで拡げることができるだろうか。一時的なものか、それとも社会へと拡げていけるものだろうか?私たちのこの感情は、時間的にそして社会的にどこまで拡げることができるだろうか。この問いの解答は、復興が成功するかどうかーー現在の災厄だけでなく、過去20年間続いた停滞と絶望からのーーによって示されるだろう。

【著者紹介】
東浩紀早稲田大学教授であり、「オタクーー日本のデータベース的動物」*2の著者である。この記事はShion KonoとJonathan E. Abelによって日本語から翻訳された。

適当訳『台湾にとっての恐怖の年: 2006年』

  • (2020年1月)はてなグループの終了にともない、記事をこちらに移動しました。

【概要】

  • 2004年のアジア・タイムズ・オンラインの記事をテキトーに訳してみたよ。
    • 記事の内容だけど、筆者が分析した中国の台湾侵攻計画について書かれているんだ。

【背景】

  • 本文を早く読みたいひとは、さっさと下の段落に行くといいよ。
  • 軍事系ブロガーとして一部で有名であるらしい(熱狂的な信者もいるんですって)obiekt JSFさんというかたが以下の主張をゆってました。
  • それはそうと、「『中国が特殊部隊を用いて台湾に侵攻する』という状況設定について記した『ソース』」としてobiekt JSFさんが出してきた(http://obiekt.seesaa.net/article/137420432.html)英語の記事をパラパラと読んでみたら、これが色々な意味で激しく面白い。
    • 記事のURLは、http://www.atimes.com/atimes/China/FD10Ad02.html アジア・タイムズの2004年の記事で、2006年の情勢について分析したものだそうな。
    • 面白かったので、読みながら簡単に訳したものを、テキトーやや悪ふざけ風味にまとめてみましたよ。軍オタのひとたちは感謝してくれていいと思うんだ。*1
    • ところで。これを読んで、侵攻開始から数時間以内に、自軍の陸上部隊の十分な支援が無い状態で、300名のアメリ海兵隊*2を乗せたヘリを台北に送り込みたいと思います?
      • 私は思いませんが。そもそも誰が味方かも分からない状況ですし。
      • mojimojiさんが言っているように*3、「撃退に成功するにせよ失敗するにせよ、沖縄にいるアメリカの海兵隊の出る幕はおそらくない。仮にありうるとしても、ちょっとどういう状況なのか想定もできないほどのレア・ケースではあろう」としか言いようがなく。
      • 元記事を読まれたというfinalventさんも「むしろ、このWendell Minnick氏の記事は海兵隊の言及もあるけどどちらかというと初動では空軍のほうを想定していて」*4だそうで。ですよねー。
    • あとこれ、フツーに台湾の経済はめちゃくちゃになると思いますが。
  • あ、訳しているひとは軍事とかあんまり詳しくないです。英語も。
    • 不適当な箇所がありましたら遠慮なくご指摘ください。
  • ではどうぞ。

【記事の筆者について】

  • 記事の筆者であるウェンデル・ミニックは週刊ジェーン・ディフェンス(the Jane's Defence Weekly)の台湾特派員だよ。
    • 『スパイと工作員:諜報・秘密活動に従事する人々の国際的百科事典』(マクファーランド社 1992年)って本も書いてるよ。

【本文】

  • この記事は2004年の台北からお届けするよ。
  • 本題。もし中国が台湾を侵略するとしたら、ノルマンディー上陸作戦みたいな大規模な揚陸侵攻作戦は行わないんじゃないかな。
  • 中国が「断頭戦略」を使ってくる可能性のほうが高いよ。
    • 断頭戦略は相手の指揮系統をショートさせ、国の中枢神経的な部分を破壊することで、相手を完膚なきまでに身動きがとれない状態にしてしまうんだ。
      • 古い格言にも「頭を殺せば体も死ぬ」ってあるよね。
    • 単に中国は権力の中枢、つまり首都や指導者たちを押さえるだけでいいんだ。
  • もし中国が台湾と再統一するために武力を用いることにした場合、その機会は2006年に訪れると言われてるよ。
    • 2008年の北京オリンピックまで2年あるから、戦争後のゴタゴタを片付ける時間があるだろうし。*5
    • 大半のアナリストは、2005年に中国の軍事力は台湾の防衛能力を上回ると見積もっているよ。
  • なので、2006年の戌年は明らかに恐怖の年になるよ。
  • アメリカ国防総省は現在、中国の台湾に対する軍事的脅威を再検討中だよ。
    • この再検討によって、台湾を防衛する上での考え方が劇的に変わったよ。
    • 伝統的に、台湾はつねにノルマンディー上陸作戦みたいな揚陸作戦を恐れていて、それに対する防衛戦略を考えてたんだ。
    • 進行中であると思われる断頭戦略の可能性を考慮に入れて、台湾をたった7日間で失う可能性について、いまやアメリカ国防総省は考え始めてるよ。
      • 以前は考えられなかったことだよ。

【台湾侵攻シナリオ】

  • 中国が最小の労力と損害で台湾を占領しようと思った場合、「特殊部隊や緊急展開用の部隊と、空軍やミサイル攻撃の組み合わせ」が一番ありそうだよ。
  • 中国の第15空降軍(空挺第43、44、45師団)が直接、台北に降下作戦を行うのが侵攻の第一段階になるよ。
    • 各師団は11,000の歩兵と軽戦車と自走砲を持ってるよ。
  • 台北以外にも、台湾の第6軍団に所属する4個師団を戦術的に拘束するために、林口(Linkou)、桃園(Taoyuan)、宜蘭(Yilan*6)に降りるんじゃないかな。
  • いくつかの分析資料によると、中国は1988年のチベットでは、1個師団の空挺を48時間で完了させたらしいよ。
    • 今ではその2倍くらい、22,000人くらいは2日で降ろせると思うね。
  • 台湾の陸軍第6軍団には7個歩兵旅団が属してるよ。
    • 第152/153ドラゴン旅団と、第176/178タイガー旅団は精鋭だと言われてるね。
    • 第269機械化旅団、第351機械化歩兵旅団、第542装甲旅団への直接攻撃も中国軍にとっては必須なんじゃないかな。
  • 最初の戦闘のほとんどは、総統府やら国防部やら立法院やらがある台北市の中正区で起こるんじゃないかな。
  • 中国軍が地面を踏むと同時に、台湾陸軍の憲兵隊を相手にすることになるよ。
    • 憲兵隊は、重要拠点のすべての鍵を持ちすべての扉を守る門番だ。
      • 中国軍が攻めてきたら本当の意味でそうなるね。
  • 中国の空挺部隊は、数時間後、ことによると数日後に、台北郊外に駐屯している通常の歩兵部隊を相手にすることになるよ。
    • 増援が来るまでは、中国軍を阻止するのは憲兵隊におまかせだ。
      • ――ダメかもしれないけど。

【要人暗殺や破壊工作も起こるかも】

  • 侵攻の何ヶ月も前に特殊部隊が台湾に侵入していて、侵攻の数時間前に指導者を暗殺したり、レーダーや通信施設を攻撃したりするかも。
    • 侵入者は台湾軍や警察のシンパから支援を受けられるかも。
      • 軍や警察の少なくとも75%は国民党支持――つまりは中国・台湾の統一を支持している――と考えられているんだ。
    • 侵入者の多くはタクシーを使って、気付かれずに街を動き回ることができるんじゃないかな。
    • 中国情報部が本土の売春婦を雇って、台湾の指導部に対して色仕掛けを企むこともありそうだね。
  • 空挺部隊台北国際空港*7を確保した段階で、侵攻の第二段階がはじまるよ。
  • 緊急展開用の第14師団が、Il-76やらやらY-8やらアントノフ26やらの輸送機でやってくるよ。
    • もちろん1,000機の戦闘機や爆撃機も一緒だよ。
  • 輸送機の数が足りない場合は民間機も使うかも。中国は500機のボーイングエアバスを持ってるし。
  • ヘリコプターだって使うね。
  • 輸送された部隊は、橋や重要施設を押さえるために首都中に散らばっていくよ。
  • おっと、中国軍は台湾の緊急展開部隊に直面するかもしれない。新しく創設された"Aviation and Special Forces Command (ASFC)"っていう部隊があるんだ。
    • 3つのヘリコプター旅団と第862特殊歩兵旅団を1つの戦闘団にまとめたものだよ。
    • 第862特殊歩兵旅団はエリート空挺旅団で、アメリカ陸軍のレンジャー部隊をモデルにしてるよ。
    • CH-47SDチヌーク輸送ヘリと、AH-1Wスーパーコブラ攻撃ヘリを持ってるんだ。
  • また、台湾には注目に値するイカした特殊部隊がいくつかあるんだ。
    • 海軍には"the Amphibious Reconnaissance Patrol (ARP)"と"the Special Services Company (SSC)"がある。
    • 陸軍には"the 101st Amphibious Reconnaissance Battalion (ARB)"(陸軍フロッグマン部隊)と"the Airborne Special Services Company (ASSC)"(デルタフォースをモデルにしてるんだ)がある。
  • まあ、彼らが戦闘に間に合うかどうかは別の話だけど。
  • 特殊部隊や海兵隊を除くと、台湾島全体に散らばってるその他の歩兵部隊がちゃんと戦うようには見えないよ。
    • 「犬が戦うときには、戦いの中で犬が占める大きさではなく、犬の中で戦いが占める大きさが問題となるのだ」*8って言葉があるよね。
      • 台湾陸軍は、20ヶ月の徴兵期間を終わらせてガールフレンドや仕事のところに戻ることを乞い願う、無気力で役にたたない兵隊で一杯だよ。
  • 多くのひとは台湾の若者(兵隊も含むよ)のことを「いちご世代」って呼んでるんだ。
    • いい生活のおかげで甘やかされて、軟弱になっちゃったってこと。
  • 台湾を訪れたアメリカ陸軍の士官は、しばしば、台湾陸軍の新兵訓練キャンプが「ゆとり」すぎるんじゃないの、って不満をこぼすよ。
    • 「中国の侵略よりも、自分とこの兵隊の親御さんが怒るのを恐れてるんじゃねえの?」とも言ってるね。
  • ある『政治的に正しい』国会議員がアジア・タイムズ・オンライン(この文章が載ってるやつ)に「台湾は軍内での暴力に対処しなければならない」って訴えてきたことがあったよ。
    • 記者は彼に指摘したよ。「いやその、軍隊って暴力機構なんですけど」

【台湾軍のアイデンティティ危機】

  • 台湾軍はアイデンティティの危機に直面しているよ。
  • 台湾は中国の一部だという考えは、未だに台湾軍内で強い共感を得ているんだ。。
  • 陸軍の部隊章には、しばしば中国の輪郭が描かれているよ。台湾じゃなくてね。
    • 軍団や師団の部隊章(第6軍、第8軍、第46師団、そして海兵隊だ)に中国が描かれてるよ。「鷲が中国本土に降りる」画像(第117歩兵旅団)や、万里の長城を部隊章にしている部隊(第34師団、第157歩兵旅団、第200機械化歩兵旅団)もあるよ。
    • 台湾島を部隊章にしている部隊はゼロだよ。
  • 実際、台湾軍の基地を訪問したひとは、基地が台湾にあることに気付かされるようなものを、まったく見つけることができないよ。
  • 徴兵された台湾の兵士にとって、中国は軍隊経験の中心に位置するテーマなんだ。
    • ほら、海軍の艦艇名ですら中国をテーマにしてるじゃん。
  • この侵攻シナリオで台湾海軍ができることはほとんどないよ。
    • 石のように海底に沈むこと以外は、だけど。
  • そりゃまあ、台湾に飛んでくる飛行機を何機か撃ち落とすことはできると思うけど、圧倒的な数の中国の対艦ミサイルを前に、ほとんどの艦艇はドボン。
  • 特にヤバいのがロシア製サンバーン対艦ミサイルだよ。
    • アメリカ製のハープーンの3倍の速さで飛んできて、おまけにハープーンのように目標の舷側に当たったりしない。目標の直前で上昇して、デッキに向かって垂直ダイブ。
      • 速度と角度からして撃ち落とすのはほぼ無理だし、電子的な対抗手段もダメだよ。
  • 台湾空軍は、中国軍が本土沿岸から発射した短距離弾道ミサイル500基による滑走路のダメージを修復するために忙殺されるよ。
  • 中国の第二砲兵部隊(いわゆる戦略ミサイル部隊だね)が、短距離弾道ミサイル東風11号(Dong Feng 11, M-11)と東風15号(DF-15, M-9)による複数方向からの多重飽和攻撃を、空軍基地や港やその他の重要拠点に対して実施するよ。
  • 少数のミサイルは台北周辺に配備されてるパトリオット・ミサイル3個ユニットによって迎撃されるかもね。
    • でも、パトリオットが守れるのは台湾の北部だけで、南部には手が回らない。
    • それに中国の特殊部隊が侵入してパトリオットの位置を調べたり破壊したりしようとしたりするかもね。
      • パトリオットがどこにあるかみんな知ってるから、それほど難しいことじゃないし。
  • 台湾空軍が何機か戦闘機を離陸させたとしても、中国軍は最新鋭のスホーイ30やらその他スホーイ27やらJH-7やらの戦闘機で対応できるよ。
    • 中国軍は今年の初頭に154機のスホーイ27をロシアから受け取ったよ。
      • 2004年の終わりには、中国は273機の先進的なスホーイ戦闘機を持っていると考えられるんだ。
  • 基地が破壊される前に滑走路から離陸した台湾空軍の戦闘機は、中国軍と激戦を繰り広げるだろうね。
    • でも燃料がなくなっても、着陸する場所はないんだ。
    • 多くの戦闘機は単に最後まで戦って、パラシュートで緊急脱出するだろうね。
  • 中国軍の100機のH-6轟炸六型(Tu-16バジャー爆撃機ライセンス生産)と約500機のH-5轟炸五型(Il-28ビーグル爆撃機のコピー)が、最初のミサイル攻撃で破壊されなかったエリアへの攻撃を行うよ。
  • 中国軍にとってとくに注目すべき場所は、台湾東側にある、山をくりぬいて作られた2つの「秘密」の空軍基地――花蓮のChihhang(漢字が出ねえ)空軍基地、台東の知本航空基地――だよ。
    • これらの基地は最初のミサイル攻撃に生き残るため、中国空軍にとって少しばかり余分な手間が必要となるよ。

【中国支持の新政府がすみやかに宣言を実施するよ】

  • 台北が占領された時点で、北京によって選ばれた新政府が宣言を行うよ。
    • 候補になる台湾人の政治家はたくさんいるよ。
      • 中国に投資しているたくさんの親中派の国会議員がいて、何人もが北京政府と私的な会合を持っていることが知られているんだ。
    • 宣言は国際的なメディアのスポットライトのもとで執り行われるため、ある程度の心理的な正当性があるように国際社会の目には映るよ。
    • アメリ国務省内には親中派のひとたち――内心で、台湾問題がやっと解決したと安堵してる――があまりにも沢山いるから、台湾防衛については取り上げられないかもね。
  • 新政府の宣言が行われると、新しい台湾総統は中国に対するすべての敵対行為を停止すると発表するよ。
    • 台湾全土に向けたテレビでのスピーチで、新総統はすべての部隊が休戦するように命令するよ。
    • 台湾軍内部で高まっている親中国的な心情からすると、ほとんどの部隊はしぶしぶながら新総統に従うと考えられるよ。
  • 新総統はアメリカ政府によって2002年に敷設された新しいホットライン回線を使ってアメリカ国防総省に連絡をとろうとするよ。
    • 台湾に味方しようとする、あるいは台湾の新しい賓客である中国に敵対しようとするようなアメリカの軍事行動について警告を発するよ。
    • ホットライン回線を使うことで、彼および彼の閣僚が秘匿通信に必要な暗号を知っていること、また、新総統が台湾国防部内のホットラインにアクセスする権限を持っていること――つまりは権力と支配をアピールするよ。
  • アメリカ軍は命令があり次第、このシナリオに対応可能だよ。
    • 問題は、アメリカ軍が台湾防衛にどれくらい関与できるかということだよね。
    • 中国軍の侵攻速度を考えると、USSキティーホークを除いた空母は、最初の時点では間に合いそうにないよ。
    • 即応可能なもっとも近くのアメリカ軍は、台湾から(飛行機で)20分しか離れていない沖縄にいるよ。
  • 沖縄の嘉手納基地にある第5空軍配下には、F15ストライク・イーグル2個飛行中隊がいるよ。

海兵隊を呼びますか?】

  • 中国軍はアメリカの航空戦力を恐れるのはもっともだよ。
    • アメリカ軍パイロットの練度は中国をはるかに上回っているよ。
    • 中国の訓練プログラムは「ゆとり」なので、中国軍の飛行機が墜落して炎上する光景をテレビで見るのは驚くことではないよ。
    • 中国がアメリカ軍が日本や韓国から撤退してくれるよう切実に願っているのも、分かるってもんだね。
  • アメリ海兵隊は太平洋に7隻の強襲揚陸艦――さまざまな種類のヘリコプターや戦闘機や海兵隊員を積んだ――を持ってるよ。
    • これらは単体で侵攻可能な戦力だと考えてよいよ。
      • タラワ、ベロー・ウッド、ペリリュー、エセックス、ボクサー、ボノム・リシャール、イオー・ジマがその7隻だよ。
  • これらの船は基本的に小型の空母だと考えてよいよ。
    • たとえばタラワは、AH-1シーコブラ戦闘ヘリ4機、CH-53スタリオン輸送ヘリ6機、M-60戦車20台, 軽装甲車両29台, AAV-7水陸両用強襲車29台、海兵隊1個増強大隊1,900名を輸送できるよ。

アメリカの空母打撃群がグアムへと移動してくるかも】

  • また中国軍は、グアム近くのアンダーセン空軍基地へ移動してきたニューカマーを考慮に入れる必要があるよ。
    • 今年2月に、アメリカ太平洋軍司令部(PACOM)の要請に応じて、ノースダコタ州マイノット空軍基地にある第5爆撃航空団のB-52ストラトフォートレス戦略爆撃機6機がアンダーセン基地にやってきたよ。
    • PACOMは「その必要がなくなるまで、ローテーションで爆撃機をアンダーセンに配備する」ように要請してるよ。
  • PACOMは、この移動は北朝鮮情勢への対応だと主張してるけど、他のひとは台湾情勢がこの移動の根っこにあると推測しているよ。
    • 「表向きの理由は北朝鮮情勢だけど、裏の理由は台湾」というのは、アジアにおけるアメリカ軍の基本的なテーマだよ。
    • いまやグアムは、ハワイに代わって空母打撃群を配備する拠点として考えられているんだ。
  • 軍事バランスのもう一つの要素である日本も、この状況に介入可能だよ。
    • 多くのひとが、中国が台湾を占領したら、日本と韓国はただちに――たぶん数ヶ月以内に――核兵器を開発・配備すると主張しているよ。
    • 台湾海峡を中国に明け渡して、軍事的な冒険心に富む北京政府に直面することは、この地域全体に衝撃をもたらすよ。
    • もし日本が介入することを決めた場合、日本には9個飛行中隊のF-15があるよ。
  • アメリカを巻き込んで紛争が拡大した場合、中国がこの地域のアメリカ軍基地に攻撃を行う可能性もあるよ。
    • 終端誘導可能な東風21号(DF-21C)准中距離弾道ミサイルを沖縄に発射するのが、その手始めになるんじゃないかな。
  • でも、アメリカ軍が台湾海峡を通る中国軍の飛行機や艦船と交戦するまでは、北京はこのオプションを検討しないと思うよ。
  • アナリストによると、中国は日本やアラスカ、ハワイにあるアメリカ軍基地に特殊部隊での攻撃を行う可能性すらあるってさ。
  • これらのオプションは中国に自軍を強化する余裕を与え、アメリカ軍の介入を妨げるよ。

【どうして台湾を守らなければならないかって?】

  • 地図を見れば誰でも理由はわかるよね。
  • 台湾の地理的位置は戦略的に非常に価値があるよ。
    • 台湾海峡シーレーン海上交通路)の要衝で、中国が台湾を押さえることで日本や韓国への国際商用航路――とくに原油――を妨げることが可能になるよ。
    • だから、台湾を守る必要があるんだよ。
  • それに加えて台湾は、アメリカの情報収集において重要な監視口になってるよ。
    • 台湾の国家安全局とアメリカ国家安全保障局NSA)は、台北のすぐ北にある陽明山で共同のシギント(通信情報活動)施設を運営しているよ。
      • これについては「スパイの山:どのようにアメリカが中国をスパイしているか 2003年5月6日号」*9を参照するといいよ。
  • 台湾が中国の軍事力下に置かれることは、日本にとって想像を絶することだよ。
  • もちろんこれは、意図的に選択した事実に基づき、推測で味付けしたシナリオにすぎないよ。
  • 中国に何が出来るかという想定と、何をするだろうかという想定は別の話だよ。
  • ノルマンディー型の侵攻や、もしくは最終戦争のようなミサイル攻撃に言及するけれど、この両者の中間に位置する最速の侵攻計画について真剣に検討しない、メディアの評論家があまりにも多いんだ。
  • もちろん中国には「どんな侵攻計画もムダだよ」って警告すべきだけどね。

*1:「もうちょっとマジメな文体で書いてくれたら読む気になるのに。相手に伝えるための戦略が悪いよねー」と思われましたら、おたよりください。検討します。

*2:数はてきとう。普天間基地のCH-53Eが15機ぐらいって聞いたので、機体の稼働率7割で、あと予備機やら何やら考えたらこんなものかなあと

*3:http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20100109/p1

*4:http://d.hatena.ne.jp/finalvent/20100104/1262563983

*5:註:その理由ってどうよ、とか思いました。

*6:註:本文中にはIlianとあったけど、これかなあ

*7:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%B0%E5%8C%97%E6%9D%BE%E5%B1%B1%E7%A9%BA%E6%B8%AF

*8:"It's not the size of the dog in the fight, but the size of the fight in the dog that matters." 犬が自分より非常に大きな相手と戦うときには、肉体的なサイズよりも勇気などの精神的な態度のほうが重要になる、とかそんな感じの意味。

*9:http://www.atimes.com/atimes/China/EC06Ad03.html

(翻訳)アメリカ陸軍における「起きていることはすべて正しい」

うんまあ、タイトルで釣る、みたいなことを一度やってみたかったのです。

戦争に行って実りある人生を・・・米陸軍が戦闘体験のポジティブ効果に注目、自己啓発活動としての兵役を呼びかけ。(ジョークじゃないよ)http://www.armytimes.com/news/2009/10/ap_combat_positive_effects_research_101909/
http://twitter.com/gloomynews/status/5029696216

というのを見かけたので、読むついでに適当に訳してみましたよ。読んでみての感想は「これはひどい」ということで。
あ、「自己啓発活動としての兵役を呼びかけ」なんてことは書いてなかったので、上の惹句は不適切だ、ということは言っておきます。
ではどうぞ。

http://www.armytimes.com/news/2009/10/ap_combat_positive_effects_research_101909/
「戦闘のポジティブな効果が検討される――何人かの兵士は従軍して自分が成長したと感じる――」
グレッグ・ゾロヤ(USAトゥデイ紙)2009年10月20日


アフガニスタン、ワルダック地方(WARDAK)――グレゴリー・フリッケン(Gregory Frikken)曹長は、イラクアフガニスタンでの3回の遠征は家族と過ごす貴重な時間を彼から奪ったが、彼を変えてくれた――いくつかの点で良い方向に――と言います。
 個人的な強さの感覚、人生に対する感謝、家族への愛情が高まったと、ここで戦っている第10山岳師団*1の支援砲火(artillery fire)を指揮している39歳のフリッケン曹長は言います。「戦闘を経験する以前の私とは、同じ人間ではないのです」


 フリッケン曹長のような兵士たちに起きたことを見て、陸軍の指揮官たちは、GI(米兵士の俗語)たちが自らの内奥を見つめ、戦闘がどのように自らを感情的により強固にしたかを発見することを促すという回復プログラムを作成することになりました。
 研究によると、多くの人々は外傷的な経験から大きな自信や、鋭敏な思いやりの感覚、人生への感謝といったものを携えて浮上する(emerge)ことができる。そのように、ロンダ・コーナム(Rhonda Cornum)准将――陸軍の包括的な兵士適応プログラムの責任者――は言います。コーナム准将や他の専門家はこの概念を『トラウマ(心的外傷)後の成長』(post-traumatic growth)と呼んでいます。
 戦闘においてメンタルヘルスの状態を向上させる部隊に軍部は注目しているものの、コーナム准将は、退役軍人の大多数は心的外傷後ストレス障害PTSD)やその他の問題で傷つくことはないと言います。
「我々は誰かが何らかのポジティブな成果を得たかどうか質問することは決してありません。我々はこの病気の長いリストについて質問するのみなのです」と、戦闘地域から兵士たちが帰還した際に直面する、健康に関する質問の集中砲火に言及しながらコーナム准将は言います。
 しばしば彼女は、湾岸戦争で捕虜となった自らの経験について暗に示しています、(それとなく)言及しています。1991年、陸軍大尉で航空医官であったコーナムは、イラクで撃墜されたブラックホークヘリコプターに搭乗していました。7人の兵士のうちの5人が死亡しました。両腕を骨折し肩に銃弾を受けたコーナムは、他の2人の兵士とともに捕虜となり8日間拘留されました。*2
 彼女の目標は、兵士たちが戦闘から復帰した3〜6ヵ月後に渡される健康問診票に、トラウマ的成長(traumatic growth*3についての自己評価の項目を含めることです。彼女はまた、イラクアフガニスタンに配備されるGIたちに対して、配備の前後にある準備期間に、戦闘を生き延びたあとで自らの生き方がどのようにより良く変わったかを述べる兵士たちを撮った短いビデオ番組を見せることを含めたいと考えています。
 1年以内に新しいツールを実施することが可能になるだろうとコーナム准将は述べています。


『トラウマ後の成長』の専門家であるノースカロライナ大学シャーロット校のリチャード・テデスチテデスキ(Richard Tedeschi)は、陸軍と共同のプロジェクトを行っています。彼はこの取り組みを「未知の領域」であると呼びますが、この研究によって、兵士が戦闘経験から価値を見出していることが示唆されていると言います。もし、基礎的な訓練の最初に『トラウマ後の成長』の可能性について伝えられていれば、「戦闘経験はPTSDを引き起こし、自分をダメにしてしまう」と兵士たちが反射的に思い込んでしまうことはなくなるだろう、とテデスキは言います。
 テデスキは最近のワシントンのアメリカ公共政策研究所*4での発言において、何人かの軍人たちは戦闘のあとで彼らの人生がとても深く変わってしまったと感じており、彼らが経験してきたことに対して感謝を示している――たとえ、その代償が、身体への永続的な損傷だったとしても――と述べています。
「彼らは、戦闘以外では成しえなかったような形で自らが変わったと感じています」とテデスキは言います。「このトラウマは彼らを他の人々から切り離してしまいますが、同時に、自分が以前よりも人間的であり、人間であることの意味と深く結びついていると自らをみなすことを、おそらくは可能にするのです」


 結婚して3人の子どもがいるフリッケン曹長は、ここの空挺前線基地(Forward Operating Base Airborne)から任務に向かいます。彼は、累計で33ヶ月近いイラクアフガニスタンでの戦闘について「毎日が人生最後の日であるかのように生きることを実感させてくれます。何ごとも与えられて当然のことだとは、私は思っていません」と言います。
 テデスキは、この経験は生存者サバイバー*5たちに「『私は何者なのだろう?私の人生の目的とは何だろう?』ということを解き明かそうとする」ことを強いると言います。「私たちは、ひとびとがこの方向に進むことを支援する方法を見つけたいと考えています。なぜなら、それが、このトラウマによる情動(affects)を和らげる方法なのですから」
 テデスキは彼の概念が論議の的になるものであることを認めています。
 コネチカット大学教授の臨床心理学者ハワード・テネン(Howard Tennen)は、『トラウマ後の成長』は何人かの人々には起こるかもしれないが、それを測定することは難しいと述べます。成長の感覚を促進することがポジティブな結果につながるという考えを支持する証拠は存在していないと、彼は言います。
 この概念には説得力があると感じている、とコーナム准将は言います。
「私たち*6は悪いことが起こることを望んでいるわけではありません」と彼女は言います。「しかし、もし、不運な環境から何かを学ぶ機会が存在するのであれば、私たちはその機会を確実に活用したいのです」

*1:Wikipedia:第10山岳師団 (アメリカ軍)

*2:このことについて本を書いたそうな。『イラク軍に囚われて―米陸軍少佐ロンダ・コーナム物語』http://www.amazon.co.jp/dp/4163470506/

*3:前に出てくるpost-traumatic growthとどう違うかは不明。誤りでpostが抜け落ちただけなのかも。

*4:the American Enterprise Institute 略称:AEI。共和党系、保守系シンクタンクだそうな。1943年設立。

*5:原文ではsurvivor。ここでは単なる戦闘の生存者ではなく、児童虐待や性暴力、ドメスティックバイオレンスなどの被害者のことをサバイバーと呼ぶのと、おそらくは同じ使いかたをしていると思われる。たとえばサバイバーとは - はてなキーワードなどを参照。『かつては暴力被害者を「犠牲者:victim」とよんでいた。サバイバーという言葉は、無力でかわいそうな「犠牲者」ではなく、過酷な暴力をさまざまな努力をして生きのびた人として、「被害者」の回復の視点から「被害者」をとらえなおした言葉』

*6:ここでの"We"が曲者かもしれません。コーナム准将が「私たち」というとき、それは、彼女も含めたサバイバーたちのことなのか/それとも、彼女が指導部の一員として関与しているアメリカ軍のことなのか。そこの二重性。

敏腕ナイチンゲールさんのこと

ナイチンゲール曰く、「ホメオパシー療法は根本的な改善をもたらした」
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20090810#p1

を、ちょっと前に読んだのですが、NATROMさんが挙げていた「看護覚え書―看護であること・看護でないこと」の訳で気になるところがあったので、元の"Notes on Nursing, Florence Nightingale" (Easy Read Edition)の136ページ*1を訳してみました。

NATROMさんのエントリーを読んで「皮肉屋ナイチンゲール」という人物像に大喜びしていたかたもいらっしゃるようです。1ページだけですが自分で訳してみての私の感想としては、たしかに皮肉っぽく見受けられるところもあるものの、基本的には平易かつ率直な口調で素晴らしいと思いました。皮肉で人の心を動かすには限界があることを考えると、改革者に対して「皮肉っぽい」というのは、あまり褒め言葉ではないようにも思います。

では以下、どうぞ。

I have known many ladies who, having once obtained a "blue pill" prescription from a physician, gave and took in as a common aperient two or three times a week - with what effect may be supposed. In one case I happened to be the person to inform the physician of it, who substituted for the prescription a comparatively harmless aperient pill. The lady came to me and complained that it "did not suit her half so well."
 医師からひとたび甘汞("blue pill")*2の処方薬を手に入れると、それを週に2、3回服用する日常的な下剤として互いに譲り合う、多くのご婦人がたのことを、わたしは知っています。あるケースでは、たまたま、わたしが医師にそのことを伝えたところ、医師は処方を比較的害の少ない下剤へと変更しました。そのご婦人はわたしのところに来て、その薬が「半分くらいしか効かないわ」と不平を言いました。

If women will take or give physic, by far the safest plan is to send for "the doctor" every time - for I have known ladies who both gave and took physic, who would not take the pains to learn the names of the commonest medicines, and confounded, e.g, colocynth with colchicum.
 女性が下剤を手に入れる際に、間違いなくもっとも安全なプランは毎回「医師」("the doctor")を呼び寄せることです。――わたしが知っている、下剤(physic)を互いに譲り合い、たとえばコロシントウリ(colocynth)やイヌサフラン(colchicum)といったもっとも日常的な薬の名前を学ぶ労を惜しみ、当惑してしまうご婦人がたにとっては。

This is playing with sharp-edged tools "with a vengeance." There are excellent women who will write to London to their physician that there is much sickness in their neighbourhood in the country, and ask for some prescription from him, which they used to like themselves, and then give it to all their friends and to all their poorer neighbours who will take it.
 これは、刃の鋭い道具を振り回して遊んでいるようなものです。ご立派な(excellent)女性たち――ロンドンにいる彼女らの医師に、自分の田舎の近所にはたくさんの病人がいるという手紙を書き、自分たちに処方してくれているのと同様の何らかの処方薬を出してくれるように依頼して、そして、友人たちや貧しい隣人たちすべてにその処方薬を与える女性たちがいます。

Now, instead of giving medicine, of which you cannot possibly know the exact and proper application, nor all its consequences, would it not be better if you were to persuade and help your poorer neighbours to remove the dung-hill from before the door, to put in a window which opens, or an Arnott's ventilator, or to cleanse and lime-wash the cottages? Of These things the benefits are sure. The benefits of the inexperienced administration of medicines are by no means so sure.
 貧しい隣人たちに薬を――正確で適切な薬の用量や、薬がもたらすすべての効果について、あなたがおそらく知ることができないような――を与えるのではなく、その代わりに、ドアの前からゴミの山(dung-hill)をどけることや、窓を開け放ったり、あるいはアーノット式換気装置を設置することや、住居を清潔にして石灰塗料を塗る(lime-wash)こと、といった事柄について彼らを促し、手助けするほうがよいのではないでしょうか。
 これらの事柄による利益は確かなものです。不慣れな薬の投与によって得られる利益は、けっして確かなものではないのです。

Homoepathy has introduced one essential amelioration in the practice of physic by amateur females; for its rules are excellent, its physicking comparatively harmless - the "globule" is the one grain of folly which appears to be necessary to make any good thing acceptable. Let then women, if they will give medicine, give homoeopathic medicine. It won't do any harm.
 ホメオパシーは素人の女性たちによる医術(physic)*3の実践に、ある本質的な改善をもたらしました。というのも、ホメオパシーのルールはご立派(excellent)なもので、その医術的な効果は比較的、当たり障りのない(harmless)ものだからです。――ホメオパシーの「丸薬」は、何であれ、善きことを受け入れられやすくするためには欠かせないように思われる、一粒の(= ささやかな)愚かしさなのです。
 それゆえ、女性たちが他人に薬を与えたがるのであれば、ホメオパシー的な薬を与えさせるようにすべきです。いかなる害ももたらさないであろうからです。

この"the "globule" is the one grain of folly which appears to be necessary to make any good thing acceptable. "という部分の既存の訳(『看護覚え書―看護であること・看護でないこと』では「その「丸薬」は、どうしても善行を施して満足したい人たちが必要とする一粒の愚行なのであろう。」)に疑問を持ったので自分で訳してみたのですが、「難しくてよくわかりませんでした」という感じです。
ただまあ、既存訳の「どうしても善行を施して満足したい人たち」というのは、誤訳とは言えないけれど、やや悪意のある意訳だなあと思います。

An almost universal error among women is the supposition that everybody must have the bowels opened once in every twenty-four hours, or must fly immediately to aperients. The reverse is the conclusion of experience. This is a doctor's subject, and I will no enter more into it; but will simply repeat, do not go on taking or giving to your children your abominable "courses of aperients" without calling in the doctor.
 女性たちの間でのほとんど普遍的な誤解とは、誰もが24時間に1回はお通じがなくてはならないと仮定することです。経験から得られた結論はその反対です。
 このことは医師の領分であるので、これ以上は立ち入りませんが、わたしは断固として繰り返しておきます。医師を呼ぶことなしに、あなたやあなたの子供たちに、おぞましい「下剤のフルコース」を与えることを続けてはなりません。

It is very seldom indeed, that by choosing your diet, you cannot regulate your own bowels; and every women may watch herself to know what kind of diet will do this; I have known difciency of meat produce constipation, quite as often as deficiency of vegetables;
 適切な食べ物を選んでも内臓の調子を整えることが出来ないことは非常にまれです。どのような種類の食事によって内臓の調子を整えることができるかを知るために、すべての女性は自分自身を観察することができます。野菜不足と同じくらいしばしば、肉を摂る量が少ないせいで便秘が起こることを、わたしは知っています。

*1:http://books.google.co.jp/books?id=CKRINihAKP0C&printsec=frontcover&dq=Notes+on+Nursing#v=onepage&q=&f=false

*2:塩化水銀(I) 『かつては下剤や利尿剤として利用されていたが、水銀中毒の危険があるために現在は使用されていない』http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A1%A9%E5%8C%96%E6%B0%B4%E9%8A%80%28I%29

*3:physicには下剤という意味と、古語としての「医薬・医術」という意味があるらしく、この場合はどちらか分かりませんでした

僕には他人を観察してすぐに値踏みしたがる癖がある。子供の頃から父親や弟と自分がどっちが優れているかを何度も値踏みした。最終的には大差ないという結論をだした。
http://anond.hatelabo.jp/20090719134619

うん、まあ、その。↓これを思い出しました。

ただ、ぼくにはどうしても、他者に対して持ちたくない視点、というかある方向への視線、があって、それがどういった視線なのかというと、それはなかなかひとことで言えないし、きっと言葉にして発する事はないと思う。やさしくありたい、とかそういう風に思ったことは一度もないけれど、自分の持っている残酷さには徹頭徹尾自覚的でありたい。
「おいどんはただ生きているだけよ-平民新聞」(http://d.hatena.ne.jp/heimin/20080111/p1

twitterまとめっぽいやつ

isikeriasobiさんのことについてtwitterでつぶやいていたら言及されましたでござる。( http://d.hatena.ne.jp/NakanishiB/20090703/1246575377 のコメント欄)
とりあえず、自分の「つぶやき」の中で関連するところを下にまとめておきました。あとでコメントを書く時間をとれるといいなあ。見落としなどあったら、指摘していただけると幸いです。
あ、忘れてた。古いメッセージが上になるように並べてます。

flurry いやまあ、いしけりあそび先生は「アカは口ばっかりだから嫌い」とか言っちゃいそうな古典的タイプに見えるので、一定以上に仲良くなることは望めないと思うんだ。 link
flurry 少し補足しますと、リベラルと左派との関係はややこしいので注意が必要だと思います。http://twitter.com/flurry/status/2262792418 link
flurry あと、「弱いものいじめと権力を憎む、マッチョで親分肌の個人主義者」が、流れ者の主人公のことを筋が通った男だと褒める一方で、革命家を「口だけのアカ」と罵る、というのはフィクションでよく出てくる場面ですね。 link
       
flurry あはは。>『お金もうけとラテンが好きなサヨクですが「はてサ」ではありません』 軽やかなレッテル貼りだなあ。 link
       
flurry ちょっと、これ、さすがにどうなの。http://h.hatena.ne.jp/isikeriasobi/9234088067773566645 link
flurry 「オレはずるく立ち回ってるよ」と公言してしまうことの問題点とか、ひょっとして分かってらっしゃらないのかなあ。 link
flurry 実務家(この言葉は「経営者」や「作家」と置き換えても構いません)は各々それぞれのかたちで実務家として機能しているのだけど、本人がそう思ってるポイントと、実際に機能しているやりかたは往々にして食い違うわけで。 link
flurry そこのギャップに耐えるために「オレはズルい/嘘つき/計算高い/見かけどおりじゃない」というオプションを採用しちゃうひとがいるよね、というのは、いつものわたくしのアレですが。そしてそのオプション自体に惹かれるひとがいたりするので、話はさらにややこしくなるのでした。 link
       
flurry うひょー!定番来ました! ……えーと、もうヤダよこれ。>「激怒しているときはたぶん一番冷静です」http://h.hatena.ne.jp/isikeriasobi/9234070499453367728 link

http://d.hatena.ne.jp/NaokiTakahashi/20090512/p2


どのようにお返事しようか、悩んでいるのですが。
それはそうと、なんとなくリンクを2つほど貼ってみます。ええ。