Slavoj Zizek ”You May!”(その5)

(Because the Balkans are part of Europe, ……)
 バルカン半島はヨーロッパの一部なので、アフリカやアジアに対しては使えないような人種差別的なクリシェ(決まり文句)を用いることができる。バルカン半島における政治的混乱は滑稽なオペレッタの筋書きと対比され、チャウシェスクはドラキュラ伯爵の現代における生まれ変わりとして描かれる。
 スロヴェニアは西ヨーロッパに地理的にもっとも近いために、置換された(displaced)人種差別にもっともさらされている。たとえばクストリッツァが彼の映画「アンダーグラウンド」について語った際に、彼はスロヴェニア人のことを「オーストリアの馬丁」の国民だと侮蔑したが誰もこれに抗議しなかった。旧ユーゴスラビアでもっとも発展途上の地域からやって来た『本物の』芸術家が、旧ユーゴスラビアでもっとも先進的な地域のことを攻撃しているからだ。
 バルカン半島について議論するときには、寛容的な多文化主義者は彼自身の抑圧された人種差別をぶちまけることを許されるのだ。