1800-01-01から1年間の記事一覧

このことは、ブッシュの勝利が詐欺または選挙操作の結果としての偶発的な出来事だったということを意味するわけではない。ナポレオンが二回敗北しなければならなかったことについて、ヘーゲルは適切に書いている。つまり、ワーテルローの後になって初めて、…

2001年9月11日にツイン・タワーが崩壊した。その12年前、1989年11月9日にベルリンの壁が崩壊した。11月9日は「幸せな90年代」を告げるものであった。幸せな90年代――それは、フランシス・フクヤマが夢見た「歴史の終焉」であり、リベラル民主主義が大体におい…

ウィリアム・クリストルとローレンス・F・カプランは、彼らの近著『ネオコンの真実―イラク戦争から世界制覇へ』において次のように書いている。 「我々の任務はバグダッドにおいて始まるが、しかしながら、バクダッドは任務が終わる場所ではない……我々は、新…

「新世界秩序」の新しいヴィジョンは、このように最近のアメリカ政治における実際的な枠組みとなっている――9月11日以後、基本的にアメリカは世界の他の部分を、信頼できるパートナーとしては不適切とみなしたのだ。アメリカの究極的な目標は、もはや、普遍的…

これらの指針の中で、全ての思考する革新主義者は、ブッシュの勝利を喜ぶべきである。来るべき対立の輪郭が、より明確な形で描かれようとしているからである。ケリーが勝利していたとしたら、それは一種の歴史的な例外であろう。そしてそれは、歴史的転換の…

しかし、ブッシュが勝利したことによる主な利益は、国際政治に関するものだ。もしケリーが勝っていたならば、自由主義者たちはイラク戦争の結果に直面せざるを得なかったであろう。そしてブッシュ陣営は、本来は彼ら自身が行った破滅的決定の結果に関して民…

ブッシュの勝利は、先進西欧諸国の間における利益の団結についての幻想を吹き飛ばしてしまうであろう。それは、欧州連合またはラテンアメリカにおけるメルコスールのような新しい同盟を強化する際の、痛みを伴うが必要なプロセスに新しい刺激を与えてくれる…

”The Subject Supposed to Loot and Rape”

■The Subject Supposed to Loot and Rape--Reality and fantasy in New Orleans 略奪や強姦を行っていると想定される誰か――ニューオーリンズにおける現実とファンタジー スラヴォイ・ジジェク 2005年10月20日 http://www.inthesetimes.com/site/main/article…

■ 良く知られている逸話(アネクドート)によると、何らかの迷信的な考え(たとえば、自分たちは魚や鳥の子孫であるとか)を持っていると思われる「未開人」を研究している人類学者が、彼らがそのような考えを「本当に」信じているのかどうかを直接訊ねてみ…

■ 我々はサンタクロースの慣習を通して、これと同様のことを我々の子供たちに対して行う。 子供たちはサンタクロースのことを信じている(と考えられている)。我々は子供たちを失望させたくない。そして、子供たちは彼らの純真さに対する我々の信頼を傷つけ…

■ ハリケーン・カトリーナがニューオーリンズを直撃したあとでの出来事は、この一連の「〜していると想定される誰か」に新たな例――略奪や強姦を行っていると想定される誰か――を付け加えた。 我々は皆、社会秩序の崩壊、黒人による暴力の勃発、強姦と略奪につ…

■「見捨てられ、生存の手段無しに取り残された悲惨な黒人たち」という現実は、このように、暴力的に激発する黒人、無政府状態に陥った街路で殺され強姦される観光客、女性や子供たちを強姦するギャングによって支配されるスーパードーム、という幻影へと変換…

■ もちろん、脅威の感覚は本物の無秩序と暴力によって喚起されたものである。嵐がニューオーリンズを通過した後、空き巣や生活必需品を探し漁ることなどの程度で略奪が起こった。しかし、このように犯罪が(きわめて限定的な範囲であるが)実際に起こったと…

■ そして、まったく同じことが、ニューオーリンズの略奪にも当てはまる。たとえ暴力や強姦についての「全ての」噂が実際に真実であることがわかったとしても、彼らを取り巻く噂はまだ「病理的」であり人種差別的なものだ。なぜから、これらのストーリーを動…

■ もちろん、決して我々は公然とはそれらの動機を認めることはない。にも関わらずそれらはときおり、検閲修正され、見せかけは否定的な装いで我々の公的なスペースへとヒョイと現れる。それらの動機は他の何かの付属品として呼び出されるやいなや、即座に廃…

■ しかし、懐かしの人種差別主義のみを我々はここで相手取っているわけではない。それ以上のもの、来たるべき「グローバル」社会の根本的な特徴が問題となっているのだ。 2001年9月11日にツインタワーが崩壊した。それより12年前の1989年11月9日にはベルリン…

■ 2年前、欧州連合(EU)の不吉な決定はほとんど注目を集めずに議会を通過した。EUを移民の流入から確実に隔離するために全ヨーロッパ的な国境警備隊を設立するという計画である。これこそがグローバリゼーションの真実――繁栄のヨーロッパを移民の殺到から保…

■ 2005年10月初頭、ジブラルタル海峡を越えて存在するスペインの小さな飛び地*1へと必死に侵入しようとするアフリカ人移民の問題に取り組んできたスペイン警察は、スペインとモロッコとの国境に壁を建設する計画を提案した。提案されたイメージ――最新の電子…

■ このことは、ニューオーリンズ――内なる壁が黒人たちをゲットーに押し込めて豊かさから疎外する点で、アメリカ合衆国でもっとも目に付く都市の1つだ――においての、「略奪や強姦を行うと思われる誰か」に関する流言や「噂」へと我々を引き戻す。 その流言や…

”Jack Bauer and the Ethics of Urgency”

■Jack Bauer and the Ethics of Urgency ジャック・バウアーと緊急時の倫理 スラヴォイ・ジジェク 2006年1月27日 http://www.inthesetimes.com/site/main/article/2481/(訳注:以下の文章は、テレビドラマ「24」シリーズについての広範囲にわたるネタバレを…

■ 驚異的な成功を収めた米FOX製作のテレビ・シリーズ「24」の第5シーズン第1回が2006年1月15日に放映された。1時間のエピソード24回からなるこのドラマは、ロサンゼルスに拠点を置く架空のテロ対策組織(CTU)が破壊的テロ活動を阻止せんと必死に取り組む…

■ コマーシャルさえもこの緊迫感に貢献している。コマーシャルの前に我々は、ドラマの場面内にあるデジタル時計の数字が「7:46」であるのを見る。番組が再開されたとき、その数字は「7:51」となっている。我々視聴者にとっての実時間における番組中断と正確…

■ このことは重要な疑問をもたらす。緊迫感が全体に拡がっていくこの感覚は、倫理的には何を意味するのだろうか? 事件の切迫感は圧倒的であり賭けられたものがあまりに大きいため、通常の倫理的な配慮は一時停止することを余儀なくされてしまう。結局のとこ…

■ CTUのエージェントは法律の外の薄暗い舞台で行動し、テロリストの脅威から社会を救うために「単にやらなければならない」ことを行う。捕らえたテロリストを拷問するだけではなく、テロリストとの関連が疑われるCTUのメンバーやメンバーの近親者に対して拷…

■ キーファー・サザーランドによって演じられる特別捜査官ジャック・バウアーは、この態度をもっとも純粋な形で体現している。疑念無しに彼は他人を拷問し、また、上司が彼の人生を危地に追いやることを許可する。 第4シーズンの終盤、中国の外交官を殺害し…

■「テロとの戦い*1」においては、テロリストだけでなくCTUのエージェントも哲学者のジョルジョ・アガンベンがホモ・サケル(homini sacer)と呼ぶもの――彼らを殺しても処罰されないような、法律的にはもはや人間と扱われないものたち――になる。エージェント…

■ ここにおいて我々はこのドラマシリーズの根本的なイデオロギー的虚偽に直面する。自己を道具化する、この徹底して非情な態度にも関わらず、CTUのエージェント――とりわけジャック――は「普通」の人々が通常感じるであろう感情的なジレンマに囚われてしまうよ…

■ したがって「24」を、合衆国がテロとの戦いで用いている、問題のあるやりかたをポップカルチャー的に正当化するものだとして単純に退けるわけにはいかない。なぜなら、それよりもっと大きなものが問題となっているからだ。 フランシス・フォード・コッポラ…

■ このことは権力者にとってのジレンマである。どうすればカーツ大佐を、彼の病理抜きに得ることが出来るだろうか?どのようにすれば人々を怪物に変えること無しに、必要な汚れ仕事をさせることが出来るだろうか? ナチスのSS長官であったハインリッヒ・ヒム…

■「イェルサレムのアイヒマン」においてハンナ・アーレントは、ナチスの処刑者たちが自らの恐るべき行為に耐えた方法を正確に説明した。彼らのほとんどは全然邪悪ではなかった。彼らは自らの行動が犠牲者に屈辱や苦しみや死をもたらすことを知っていた。この…